
加茂フミヨシさんといえば私がおそらく一番お世話になった教則本「速弾きがうまくなる理由 ヘタな理由」の著者であり、ギターの技術向上のためにこのようにアカデミックな研究をされているのは知っていました。
お世話になったというのはいちばん成長を実感できた本だったからです。
今年3月にその内容を論文にまとめられたのでその話題がギターマガジン経由で流れてきました
ギターの技術向上については昨今それはそれはすごい成長を感じます。
以前より明らかにうまくギターを弾ける人は多くなっている(そのように見える)
ですがそれには均一性というか、標準的なものがありません。 どのように上手くなったのか?と聞かれたら「努力」と答えるのが一番です
そういった背景から個人的にも加茂さんの技術指導の標準化(可視化かも)には興味がありましたので読んでみました。
エレクトリックギター教則本の歴史と今後への展望
内容の解説は私の頭ではとてもじゃないのでしきれないので、割愛しますが10pぐらいなので読んでみてください
理解した内容としては
1.腕時計型デバイスの有用性
・腕時計型のデバイスを使ってギターストロークからデータを取ることができた
・そのデータはプロとアマチュアの差が明確に出るような結果があった
・データの可視化をすることで練習者の演奏技術にフィードバックできる実験もした
2.教則本のあり方
・かつてピアノの教則本について研究された資料があり、それを基にギターの教則本についても検証した
・ピアノ本の研究では自己主導型学習(自分で学ぼうという姿勢を持って学習すること)が必要で、それを支えるような本が必要であるとしている
・世界最古のギター教則本および、現在の出版社が出している本についてもピアノ本と似た課題はある
これからは可視化してフィードバックを得られるような教育方法の確立や自己主導の学習をサポートする、もしくはその答えを教則本などで入手できるようになるのが望ましい
的な感じでしょうか????
論文は読み慣れていないので理解に時間がかかりますね
ちなみにデータをとるためのデバイスについてはこの発表で確認できます
加茂さんは特に右手、ピッキングについてかなり研究をされている人でそれこそ右手だけに焦点を当てた本を出しているぐらいですから
すごいなと思ったのはプロの演奏の共通点が見つかったことでしょうか。どのような演奏なのかサンプルがないのですが、リズムのよれが少なく、ストロークが早い。というのが共通項に思えます
上手い人かどうかはコード1発弾かせればわかる。と言われるくらいですから。
それが可視化されていますね。
データによるアプローチも面白いと思うのは、出音から逆算して課題を見つけるのではなく、運動の結果から治していくという点です。これは環境差をなくすという点で重要です。(アンプとかギターの弦とかそういうところ?)
指導者が1対1で教えられればいいですが、グループレッスンではそれも難しく、非効率的になるため向上の機会を失っていると。 そこでデータを取ることで個別に課題を見つけることがしやすくなるのではないかという感じですね。
これについては、現在私が受けているレッスンとは基本的に真逆の教えになります。
今私は出音をよくするための練習をしています。こちらは出音ではなく、いかに正解に近い運動動作ができているのか。というアプローチの仕方ですのでその違いは面白いです。
ただし、これは課題を見つけるプロセスと改善の確認をどこでしているのか。という点が違うだけにも見えます。 実際の指導風景を見ていないのでわかりませんが、この取得されたデータからどのように指導が入るのかというのは気になりますね。
次に教則本についての研究ですがこちらはよくわからなかったので色々調べました
まず、前提としてピアノの教則本の話ですが、大人がピアノを覚えるのに必要なファクターとして自己主導型学習によるものであることが必要らしいです。
つまり教わっているだけではダメで、自分から考えて練習したり調べたり、つまり意欲的に学ぶ必要があると。その意欲をいかに引き出したり、保つ。あるいは解決したりするのが教則本でできているのか。というのが始まりですかね
ギターに限らず技術習得に必要なこととして、「何ができないのかを自分が把握する」っていうのが重要になるんだけど気づかないことが多かったり、間違った解釈や回答を見出せないことが多い。
そこでは書籍の力ではなかなか難しいことがあったりする。とはいえ書籍というのは不変的なものでかつ、携帯性が高いのでいつでも見たり勉強したりすることもできるので気になった時や、思い出した時に使うことが多い。
例えばピッキングのトレーニングをしたいとして、今自分のピッキングにどんな課題があって、それに対してどのようなアプローチがあるのか。どのような改善トレーニングがあるのか。
これを全て説明できる本はまず存在しない。存在しないけど、ピッキングのトレーニング方法や確認ポイントなど手掛かりを見出すチャンスを得ることはできるだろうというのが各出版社の回答であるように思えた。
全体を通して気になったのが自己主導型学習という言葉
最終的には書籍にしろデバイスにしろ自己主導型学習を強く支援するためのものであれ。という感じになっている
自己主導型学習とは最初にも書いたとおり自ら学ぶ姿勢を持っての学習。で、それをサポートするのが外部ツール
イメージ的には自転車に乗るための補助輪って感じかな?
となると次はこの自己主導型学習をするためのモチベーションというかそういうところを理解していく必要がありそうだ。
こういうの大事なポイントってたぶん課題の置き方なんだと思うんですよね。それが間違ってしまうと答えが違うみたいな。簿記と一緒で前提が違うと全て狂っていくみたいな要素があるとおもう
だからこそ個別指導の強みがここにあるのだと思う。
実際に今は出音と動きを見て課題を見つけ、いくつかのアプローチを経て改善を図っているし、何よりも自分で課題を見出すところも重要
先生は問いに答えてくれる。でもその問いが優良かどうかはわからなかったりする。
とはいえこの改善の答えに辿り着くにはなかなか難しいのが機械体操的な動きではない楽器を弾くという点であることだと思う。
それゆえに研究対象としては面白いと思いますがね
などと色々考える機会になりました。
追記:
書こうとしたこと忘れてた。
自己主導型学習の練習において指導者側はアドバイスや問いに導くような指導をするべきという話になっていたと思うので、それでふと思い出しました。
これってトモ藤田先生が実施されていることなんだなって
トモ藤田さんはマンツーマンレッスンではありますが、対面ではなく、通信教育的なことをしています。
個人の目的や課題に合わせてレッスン内容を変えて一つ一つを見て教えるのではなく練習曲やアドバイスとして提供しています。
これってある意味求められていることを正しくやられているのではないでしょうか。
トモ藤田さんのレッスンは非常に地味である。という話を聞きます。以前の記事でも書きましたが基礎的なことではありますがかなり演奏に重要なことを伝えているので受講者は自分のレベルがあがることが明確にわかるし、指導方法としても自分で気づきを得やすいスタイルになっている
まさにこれは自己主導型学習における指導者側のスタンスの模範ではないだろうか。
また、話が少し変わって
少し前に、昔の教則ビデオは全然役に立たないという話題がツイートで流れきました。私もそう思うDVDをいくつか知っています。
それはまさに教える事よりも指導者側のやりたいことを出してしまったことによるものではないかと思います。こういうところにリンクしてきますね